(もりげき八時の芝居小屋第63回・’60年代演劇シリーズ第3弾)
原作/マリオ・フラッティ
脚色・演出/高村明彦
キャスト/田中美圭・小川洋・板倉有紀・小川嘉文・三好永記・真木小苗(フリー)
第三者が書いた戯曲を演出・上演する際、私は「場所」と「状況」と「問題」の3点を重視してます。
どこで、どのようなシチュエーションで、何が問題となっているのか―。私はこれを戯曲のキモと考えていますし、できるだけシンプルに示せるものが望ましいと思っています。
さて、今作品の『金曜のベンチ』は、1969年にニューヨーク在住のイタリア人劇作家、マリオ・フラッティ氏により書かれました。この戯曲を先の3つの要素にあてはめますと、以下の通りとなります。場所は公園、状況は秋の夕暮れ、男と女がいて、問題は生まれたばかりの赤ん坊と将来について、という具合です。なかなか時代に囚われない普遍性をまとっている戯曲といえます。
ここで予めおことわりいたしますが、本日上演する『金曜のベンチ』は、現在出版されている『フラッティ戯曲集』(岩田治彦訳・未来社)に収録されている『金曜のベンチ』とは、イコールではありません。私が演出家の持つ権利を最大限に行使し、大幅に構成してあります。戯曲に書かれていない登場人物も新たに創造しました。何故そのようなことをしたのか、簡単に理由を述べますと、構成したほうが2004年という今現在に、有効であると考えたためです。少々おこがましいですが。
今回の公演は「八時の芝居小屋・60年代シリーズ」という枠組みです。しかし私は、申し訳ないことに、当時書かれた(上演された)戯曲をそのままトレースするには困難を感じました。また、個人的にはそのことにあまり意味を感じられません。それよりは、当時に書かれた戯曲を勇気を持って今のものとし、そのためにあれやこれや策を講じる―。私などはこの行為の過程に演劇的醍醐味や、表現の表現たる所以を感じる人間ですので、ご理解いただければと思います。ちなみに、私が新たに構成した上演台本は、国を日本、時代設定を1960年代後半”あたり”としています。極めて厳密ではありません。どうぞごゆるりとご覧下さい。
最後に、ぜひ興味のあられる方は出版されている『フラッティ戯曲集』も読んでみて下さい。盛岡劇場3階の「演劇らいぶらりー」にも蔵書がありますので、借りることができます。
マリオ・フラッティ氏は現在も精力的に活動なさっています。今夏は「燐光群」の坂手洋二さんと合同で、新作『私たちの戦争』を上演してらっしゃいます。氏とこの作品との巡りあわせに感謝し、挨拶と代えさせていただきます。
(公演パンフレットより「演出あいさつ/高村明彦」)

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1960年代後半、秋。
枯れ葉の広がる夕暮れの公園に座り、育児書を読む加奈子(田中美圭)。
加奈子の傍らでは、バスケットの中で、赤ん坊が健やかに眠っている。
やがて遅れてやって来る晴雄(小川洋)。彼にとっては初めてとなる息子との対面。
「おっぱいがでないのよ」という加奈子の言葉を皮切りに重ねられてゆく、とりとめもない言葉のなかで、
お互いの描く未来像に開きがあることに、二人は気づいてゆく。
執筆活動に忙しく、生活費は渡すが結婚はしないという晴雄に対し、
加奈子の友人・真利子(板倉有紀)を家政婦として雇いたいという加奈子。

やがて、晴雄と加奈子との間に生まれた子供は既に窒息死していること、
真利子がなぜ家政婦として住み込む必要があるのかが、観るものに明かされるが、
晴雄は、加奈子の抱える不安を受け止めたいと、強く思う。

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弘の祖母の語る「人間は悩むように出来ているのだから、グズグズ悩めば良い」という言葉を着地点に、
それぞれが望む最良の結果と、いま現在、自分が立っている地平との「近づくことのない隔たり」を、
60年代の名作を通して、優しく、静かな視点で描く。

■劇作家マリオ・フラッティ(Mario Fratti)について
ハンター大学イタリア文学教授。1927年、イタリアに生まれ、1963年にアメリカに移住。
映画界のアカデミー賞に匹敵するトニー賞など、数々の賞を受賞した、世界的に有名な戯曲家。
また、ヨーロッパの9つの新聞で演劇批評を執筆している批評家としても知られている。
代表作として、トニー賞を受賞したミュージカル「ナイン」をはじめ、
「自殺」「かご」「帰還」「マフィア」「橋」など、多数の戯曲を執筆。
2004年現在も、イラク戦争への思いをぶつけた短編戯曲「ブラインドネス」を書き上げ、精力的に活動を続けている。
本作「金曜のベンチ」は1969年に発表され、1970年度のミラノ市賞・受賞作となったものを、高村がリライトしている。

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design:HIRAKAWA,shigetora
公演チラシ・オモテとウラ。

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公演パンフレット・表紙、中面。












